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河野泰子歌集
『六月の鏡』


風土に溶け込み、
定型に寄り添いながらたゆたう。
日々の営みから生まれ出る
詩のかけらの反射。
数多の別れを経た寂寥感から、
己という存在を捉え直し、
静かに今を見つめる。


・これは木の香り、此岸より彼岸へと
 わたるたましひ 美(いつく)しいそらだ
・もうおもひだせない亡母の相貌(かほかたち) 
  或るとき え、え、といふこゑや降る
・生きかはりまた生きかはりツユクサの
 野にみち神の本意(ほい)のやうなり 
・貼り替へし障子をふいに翳らせて
 羽あるものは過(よぎ)りゆきたり
・十歳のわれと此の年のわたくしと
 〈生〉とはひとつの点でしかない


第4歌集
「未来」「七曜」会員
2024年6月19日発行
四六判上製カバー装190頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
酒川千鶴子歌集
『父二人』


悲しみが短歌型式にはもっともなじみやすく、誰の歌集でもそういう歌が多くなる。しかし、酒川千鶴子の歌には悲しみよりも喜びや楽しみが数多く詠われている。これは作者の大きな個性といえる。
(藤原龍一郎・跋より)

序・矢野康史


・敬へる父二人居て恥づかしく
 ない生き方と思ふ思春期
・角張つた心は筑波の嶺仰ぎあふぎ
 歩けばくちびるに歌
・二十八歳の軍服姿の父凜々し
 待つてゐたよと目差しやさし


第1歌集
あさかげ叢書第120篇
2024年6月24日発行
四六判上製カバー装284頁
口絵4頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
古川陽子歌集
『顔あげて』


短歌のタの字も知らない人が、仙台文学館の「小池光短歌講座」にある日ふらりと現れて短歌にハマる。そうしてたちまち短歌のコツというか、短歌表現の核心をつかまえて、こうして一冊の歌集をまとめるに至る。わたしは嬉しい。大戦末期北朝鮮に生まれ、帰国して家族力を合わせ、懸命に生きてきた。期せずしてわれわれが見るのは、戦後一庶民のその貴重な自分史である。
(小池 光)


・しづかなる老後来たればいまいち度
 『月と六ペンス』読まむとおもふ
・種無しの柿より出でし種ひとつ
 捨てがたくしてポケットの中
・戦争と幼児虐待のテレビより
 のがれて雪の梅に真向ふ


第1歌集
「短歌人」同人
2024年6月12日発行
四六判上製カバー装196頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
小田桐夕歌集
『ドッグイヤー』


自分一個の存在さえままならない私たちが、それでも「あなた」を、あなたに伝える「こゑ」を求めることのひたむきさ
(小島なお)
質感の把握が小気味好い。理屈ではない肌触り、それがまずあって、そののち言葉となっていく。
(梶原さい子)
ずれていればこそ、ものごとは立体的に感じられてくる。ざわざわした影をともなうことによって、輝きはなお美しく輝く。
(真中朋久)
[栞より]


・くるみぱんにゆがんだ胡桃があることの
 ひたむきさを抱へてゆかな
・かぎろひの春の書棚よ その奥の
 骨のやうなる箇所に触れえず
・沸点がたぶんことなるひととゐる
 紅さるすべり白さるすべり
・パズルにはpuzzleの綴り まんなかの
 ふたつのzに腰かけてゐる
・比喩だけど、と前置きされて語らるる
 はなしにときをり比喩でない箇所


第1歌集
塔21世紀叢書第444篇
2024年5月27日発行
四六判上製カバー装210頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
白井陽子歌集
『切り株』


一首一首に、忘れてしまったかもしれない生の手触りを残してゆく日常詠の奥深さ。
(永守恭子)
白井さんの歌の声は、地続きの強さと素朴さと純度をもって、まっすぐ人間の根っこに向かってくる。
(なみの亜子)
歌から感じるのは、母・作者・娘・孫と続く女四代の系譜の強さである。
(松村正直)
[栞より]


・警笛をぷっと落として帰りゆく
 駅までわれを送りて夫は
・児が振り向けば児の手のホースも振り向いて
 われや窓までぐっしょり濡らす
・あとしばしひょごひょご動き子や孫が
 ほっこり座れる切り株目指さん


第2歌集
塔21世紀叢書第441篇
2024年4月19日発行
四六判並製カバー装214頁
口絵4頁
定価:本体2400円[税別]
Cover/William Morris
装幀/真田幸治
 

 
弘井文子歌集
『紙ひかうき』


作者は出雲国、雲南市に住む。宍道湖が近い。多くがいわゆる家族詠だが、ありきたりな都会の家族詠とはちがって、ここにはいま失われたなつかしい血族のあたたかさと、手触りと、そしてふかい悲しみがある。 気が向くと斎藤茂吉の歌集をひらいたり、する。晴れ、ときどき茂吉。平明でごくわかりやすい文体のなかに、短歌への愛と信頼が奏でられている一冊だ。
(小池 光)


・黒き梁のもとに九人の血縁の
 つどひて蟹の脚たべるなり
・脂汗いづることなく書きたらむ
 茂吉の署名が『寒雲』よりいづ
・「じんせいはかみひこうき」と助手席の
 チャイルドシートで五歳が歌ふ


第1歌集
「短歌人」同人
2024年4月6日発行
四六判変型上製表紙装148頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
新海広之句歌集
『蒲公英の絮』


59歳で亡くなった作者の遺句歌集。
高校の生物教師としての暮らし、
折にふれて詠まれた俳句と短歌。

夫の大きな眼で、心で見つめた景色が、創作したいくつもの
俳句や短歌に込められていると思います。
(「あとがき」より)


・朱夏千二百六十余回阿修羅像
・炎帝やゲームセットの内野ゴロ
・とりあへず行けるところまで飛んでゆき
 天命を待つ蒲公英の絮(わた)


遺句歌集
2024年4月6日発行
四六判上製カバー装176頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
今井 聡 著
『ただごと歌百十首
 奥村晃作のうた

出会いから二十余年、
師を慕い、師の背を追い、
現代ただごと歌の
魅力を解き明かす。

〈奥村晃作〉を
発見する意欲作。


コスモス叢書第1234篇
2024年2月20日発行
四六判上製カバー装160頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
大松達知歌集
『ばんじろう』


「十九歳のときに「コスモス」に入会してから、三十三年を超えた。多くの方々と出会い、多くの方々とはもうお会いできなくなった。そんな感懐をもらす年齢になったのだ。」
(「あとがき」より)


充実期の597首収録

・いつのまにか速足になる通勤路
 けっこう好きだこの人生は
・上の子と呼ぶことのなしこの先も
 ずっとひとりのひとりの娘
・オーマツさんにもいろいろモンダイある
 けどさっ、さっと言われていまも忘れず
・温泉が六時間後に効いてくる
 五十というはじんわりがいい
・標本木のような生徒のひとりふたり
 解き終わるまでちらちらと雲

第6歌集
コスモス叢書第1233篇
2024年1月25日発行
四六判上製カバー装254頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
外塚 喬 著
『うたの徒行』


言葉に寄り添いながら、
短歌が傍らにある暮らし。
師 木俣修、
うたの仲間たち、
そして家族、
人への思いが作者を更に歩ませる。
かけがえのない日々を
やわらかな筆致で綴った
「朔日」連載エッセイの集成。

第2エッセイ集
朔日叢書第122篇
2023年12月19日発行
四六判並製カバー装264頁
定価:本体2400円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
奥村晃作歌集
『蜘蛛の歌』


 斎藤茂吉の『白き山』、北原白秋の『黒檜』に比すべくもないが、わたしはわたしで、短歌人生の総括としての最終歌集を出したいと思い、出すことにした。
 昨年の初夏から本年の初秋に至る一年五ケ月の作品を対象として、落とすべき作は全て落として、三百五十三首を得た。数もよさそうである。
『象の眼』に次ぐ十九番目の歌集となる。
(「あとがき」より)

・論作両輪を努めてきたが
 結局は歌だな歌だ歌人は歌だ
・勝つというよりは勝たせてもらったと
 いう感じなり囲碁は楽しも
・草花に詳しく親しくなったのは
 コロナウイルスのお陰の一つ
・「戦争は悪だ」と歌いし柊二師の
 身はボロボロとなりていましき
・前線で戦う兵士こそあわれ
 ウクライナのまたロシアの若者あわれ 


第19歌集
コスモス叢書第1232篇
2023年12月19日発行
四六判上製カバー装234頁
定価:本体2600円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
川田由布子歌集
『水の月』


時間は静かに過ぎてゆく。
川の町に住み、
訪れる鳥たちが、
日々に彩りを添え、
自らの生を取り戻す。
透徹した眼差しに貫かれた
十五年間の作品。

・足音がすこし遅れてついてくる
 外階段のたそがれどきなり
・場所前になると空気がうごきだす
 相撲部屋多き清澄二丁目
・美容院に流れていたる「茶色の小瓶」
 さざなみとなり私を揺らす
・頁繰る音のみ聞こゆる夜となりて
 二人きりなり二人の静けさ
・神染むと己が作りし秋茄子を
 詠みたる青邨その深きいろを


第4歌集
「短歌人」同人
2023年12月19日発行
四六判上製カバー装200頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
河合利子歌集
『踊り下駄』


岐阜県郡上市の腰のあたり、かつて「第一回全国美しい村サミット」が開かれた旧美並村が、河合利子さんの暮らしの場である。その風土の豊かさ、たくましくも温かい家族の姿、農に生き反戦を貫く人生態度。どの歌も困難を力に変えて生きる強さと明るさに満ちている。それは、年々の夏を踊り尽くし、擦り切れ古びながらなお、次の夏へと力を蓄える踊り下駄のようだ。河合利子さんはまさに、郡上の人なのである。
(小島ゆかり)

・晩婚のわれに授かりし一人子が
 盆に帰り来ピアスをつけて
・「そりゃあなた、踊りは浴衣」と言ふからに
 昔の浴衣とりだして着る
・いいかげんは好い加減なり家事、百姓
 すべてゆつくりするのがよろし


第1歌集
コスモス叢書第1227篇
2023年10月29日発行
四六判上製カバー装216頁
定価:本体2500円[税別]
装画/河合都妙
装幀/真田幸治
 

 
福井有紀句集
『クレオパトラ記』


俳句による夢園の時空間。
率直かつ奔放に

・マーラーの未完を耳に年惜しむ
・冬の日々クレオパトラと呪文かく
・淋しいよ淋しいよけふ冬至粥
・日射し浴び余生大切ふとん干す
・誕生日祝ふ背に黄砂降る  


第1句集
「古志」同人
2023年9月18日発行
四六判上製カバー装132頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
堀部明兎歌集
『Lute』
(リュート)

首都圏から安曇野に移住、
安曇野、生きもの、家族、続 家族、人々、登山、
6つのテーマに分け、
7年間の331首を収録する。

・空澄みていつしかリュートも鳴りやみぬ
  午後静かなり秋が来ている
・移住して嬉しきことの一つ目は
 青く広がる空の優しさ
・おたがいの夢からさめて現し世の
 朝のキッチン今日がはじまる  


第1歌集
「短歌人」会員
2023年8月10日発行
新書判並製カバー装164頁
定価:本体1500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
長谷川莞爾歌集
『遍路笠』


前衛短歌の風をモロに受けた早熟な文学青年が幾歳月を経て巡礼者に変貌していた。
「短歌人」の同期として残ったのは著者と私のふたり。
遅すぎた第一歌集は日本的情念の奔出や悲運の女人たちへの鎮魂で圧倒する。
これらは満洲をうぶすなとする著者のたましいの軌跡でありこころの流離のさまなのであろう。
(三井ゆき)

・参道を上りゆくときひとりなり
 いつも遅れていつもはぐれて
・河原には子を亡くしたる母たちが
 積みし石ありあら草のなか
・転生がわれにあるなら羊など
 飼ひてクメールの娘を娶り 


第1歌集
「短歌人」同人
2023年7月29日発行
四六判上製カバー装204頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
山田恵里歌集
『秋の助動詞』


 一首一首が明快である。そして、読み進めながら不思議に力づけられてゆく。それは、言葉というもの、表現というものを信じて組み合おうとする、しなやかで果敢な心が響いてくるからだ。
(梶原さい子・栞より)

 一般的に、人物を描くと、厳しい現実はドラマチックになり過ぎ、幸せな場面は甘くなり過ぎる。しかし、この歌集の場合、人に寄り添いながらも、人を見つめる視線には適度な距離感があるのがいい。
(大松達知・栞より)

・ガンガラと派手に蹴られしロッカーは
 今叱りたる我の身代わり
・「十八年」私のそばにいた娘
 「たった」と付けたり外してみたり
・すぎゆきを振り返らせるもみじ葉は
 過去推量の秋の助動詞


第1歌集
コスモス叢書第1222篇
2023年6月24日発行
四六判上製カバー装220頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
真中朋久歌集
『cineres』
(シネレス)

集題はラテン語の「灰」。
往還の多き暮らし、喧噪から静寂へ。
軽やかに、時に激しく、
日日の濃淡の断片を切り取った重層的な作品世界。

・朝靄のまぶしき坂をおりてゆく
 ひとつひとつがくらやみの器
・たのしかつたんでせうと訊かれて言ひよどむ
 灰をかきまはすやうな日のはて
・視界内降水しづかに閃光は見ゆ
 いくたびも国はほろびむ
・そのさきは終りとぞいふ口ぶりの
 甘美にてひとは思考放棄す
・ひかりはかぜかぜはかがやき草のなかに
 うしなひしものそのままでよし 


第6歌集
塔21世紀叢書第426篇
「塔」選者
2023年6月8日発行
四六判並製カバー装212頁
定価:本体2400円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
山中もとひ歌集
『生きてこの世の木下にあそぶ』


山中もとひは歩く人、
山中もとひは見る人、
山中もとひは動きながら
世間を観察し、
世界を認識する人。
きちんと見れば
世の中はこんなに面白い。
世界の七不思議も
町内の珍事も
この歌人の視界の中にある。
歌人の視線を浴びると
街の事物も正体を
あらわしてしまうのだ。
今日を見つめることで、
昨日も明日も
お見通しにちがいない。
(藤原龍一郎)

・幸運を無駄遣いしてまたバスが
 わたしばかりに都合よく来る
・公衆トイレの配管ボックスの扉から
 人の出てきて一礼されたり
・「人間の営為の半ばは移送なり」
 わが身のほかは今日は運ばず


第2歌集
「短歌人」会員、「鱧と水仙」同人
2023年5月1日発行
四六判上製カバー装118頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
森直幹歌集
『蝉のシエスタ』


この一巻は2022年の毎日、
一日一首ずつ詠まれた日録歌集。
日録とは即ち人生の記録である。
淡々と過ぎ行く平凡な庶民の毎日、
シエスタ(午睡)のような日々の繰り返し。
その何も起こらぬゆえの波乱万丈!疾風怒濤!
四コマ漫画のような諧謔の妙味をこそ味わってほしい。
(藤原龍一郎)

・北向いて電話ボックス立っている
 どこでもドアの残骸として (弥生13日)
・トーストにバターのせれば融けだして
 停戦願うテレビのニュース (卯月21日)
・束の間の蟬のシエスタ
 公園のベンチの上に漂う時間 (文月17日)


第1歌集
「短歌人」同人
2023年3月25日発行
四六判上製カバー装228頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
石畑由紀子歌集
『エゾシカ/ジビエ』


第38回北海道新聞短歌賞受賞

様々な力に抗い、自らの大切なものを守るために、作者はこれからも歌を詠み続けていくだろう。
(松村正直・栞より)

石畑の歌の醍醐味は、自然賛歌や人生賛歌の向こう側を見せてくれる所にある。
(北山あさひ・栞より)

すぐに消える雪の結晶が、つよく心に刻印を捺してしまうような言葉たちだ。雪が残酷にうつくしい
(佐伯裕子・栞より)

・くちびるに触れるはかないものたちを
 あまく殺めて これは雪虫
・故障中 貼り紙がはためいている
 あなたはどんなふうにされたの
・スズメ目おまえの腹の輪郭を
 おもえばふかくふかく降る眠り
・食されぬ肉塊として車輛越し
 一度限りの邂逅われら
・生まれなかった子はみんな姉
 ジッパーを上げるとき風となって助ける


第1歌集
「未来」会員
2023年2月10日 第1刷発行
2023年12月25日 第2刷発行
四六判並製カバー装176頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
清原洋子歌集
『貝のむらさき』


震災の後の歳月、
福島に暮らし、
対峙する厳しい現実。
歌に支えられ、
歌を手に歩みながら、
詩の萌芽を静かに待つ。

・拾ひしは鳴砂の浜の貝ひとつ
 その紫をてのひらに愛づ
・届きしは未来 金文字のダイアリー
 残されてある余白眩しも
・激震のさ中這ひつつ摑みたり
 闇の中なる小さな空を


第2歌集
歌と観照叢書第307篇
令和5年1月15日発行
四六判上製カバー装210頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
池野京子歌集
『彼岸花咲く』
(ひがんばなひらく)

女性としての新しい時代を切り開いてきた池野さん。その姿をたしかに記し、後進に示してゆく。家族を愛し、家族に愛される。友人たちを大切にし、友人たちに頼られる。そのひとつひとつのできごとが池野さんの人生を祝福している。博多という勢いのある街に暮らし、日本の一部を支えてきた矜持。それが、生き生きと綴られる大きな物語である。
(大松達知)

・みのしまの歴史を子らに語りをり
 千年生きし媼のやうに
・男の子のみ育てし吾が老いづきて
 母の形見の雛を飾る
・ゆつくりと静養せよと言はぬ夫
 早く帰つて来いとも言はず


第3歌集
コスモス叢書第1219篇
2022年12月23日発行
四六判上製カバー装228頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
東海林文子歌集
『しずくのこえ』


小学校教員として勤め上げ、
我が子の独立、父との別れ、
日々にたゆたうなか、
零れそうな思い。
切実さをもって詠うことで、
かけがえのない己と再び出逢う。

・さり気なく立ち止まる子の広き背は
 追いつく頃にまた進み出す
・まっすぐなまなざし集めしなやかに
 下りる指揮棒 音が湧き出す
・「成長した私たちにまた会いに来て」
 なんてすてきなお別れだろう


第2歌集
「短歌人」同人
2022年10月28日発行
四六判上製カバー装192頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
新井きわ歌集
『きみの涙はぜんぶ受け止める』


・一つずつボタンを外して脱ぎきった
 私の展開図が白く床にあり

ひとに分かってほしいことがあまりにもいっぱいある時、歌をつくるのは難しい。
ひとに伝わるかどうかなど考えない時になにかが生まれる。さまざまな自分を歌に込めてきた新井さん。でもこの一首はあなたの残響【エコー】のようで、いいなあ。
自分であって自分でない白い殻のようなもの。今後の突破口になるかもしれない。
(さいとうなおこ)

解説/田中 槐

・柔軟にかつアルデンテに生きたしと
 後ろに黒髪キュッと束ねる
・歯ブラシはモップみたいになっていて
 それでも君の歯磨きは静か
・「愛してる」のポテンシャルが違うだろ
 スプーンが裂けてフォークの私


第1歌集
「未来」会員
2022年10月30日発行
四六判並製カバー装128頁
定価:本体1800円[税別]
装画/おかべてつろう
装幀/真田幸治
 

 
栗明純生歌集
『はるかな日々』


 栗明純生さんは日本資本主義の最前線にあって奮闘してきた人と聞く。その激動の日々の合間、合間にひそかに歌を作ることが切実な精神の安定、救いとなってきた。こういう人はなかなかいるようでいない。勤務の間を縫って世界各地に旅行し、またスポーツを愛し、心臓の手術も体験し、はなはだ行動的である。四十三年勤めて、退職した。どういうこれからが、そして短歌が、待っているのだろうか。興味つきないところである。
(小池 光)

・入りくるメール幾十標題を読みとばし
 さぐる緊急案件
・やわらかき笑みを浮かべて礼【いや】をする
 このドアマンもベトコンの裔【すえ】
・アラベスクの無限反復めくるめき
 モスクは夢に我を招くよ


第5歌集
「短歌人」編集委員
2022年10月18日発行
四六判上製カバー装206頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
西勝洋一歌集
『晩秋賦』


北海道に生き、八十歳で没した西勝洋一の
第五歌集にして最後の歌集。
著者六十年に及ぶ歌業の集大成。
清冽な抒情と豊かな口誦性は今なお健在。
人生の晩秋を迎えた日々を、
少しの郷愁とたっぷりの諧謔をもって
しなやかに詠いあげる。

・氷片をあまた浮かべて流れゆく
 石狩川の豊かなる音
・レンブラント六十三歳の自画像を
 真夜のテレビに観て床に就く
・就職列車の窓に泣きつつ手を振りて
 去りし少女を今に忘れず
・かくまでも遠く来しかな
 わが父の終焉の地に米を撒きたり
・「もう若くない」と言いつつ過ごし来て
 本当にもう若くない夏


第5歌集(遺歌集)
「かぎろひ」編集発行人、「短歌人」同人
2022年9月28日発行
四六判上製カバー装200頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
装画/石山宗晏
 

 
田上義洋歌集
『ひともじのぐるぐる』


 田上義洋さんはながいキャリアのある人ではないが、その歌にはなかなか味わいがある。日常の身めぐりから、ちょっと人が気づかないような材料をうまくこなして歌のかたちにしつらえる。それが自然で、明快で、こむずかしいはったりのようなものがどこにもない。なんともいえないユーモアが全篇にほのかに漂って、読んでいて楽しくなってくる。
(小池 光)

・携帯をやめて私を見ないかと
 冬の夜空にすばるが光る
・街の湯に父と入りしは去年なり
 寡黙なりしよその日も父は
・亀のこゑ聞きもらさじと池の面に
 耳を傾く白百合の花 


第1歌集
「短歌人」会員
2022年10月4日発行
四六判上製カバー装158頁
定価:本体2400円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
谷垣惠美子歌集
『埋み火』


 谷垣惠美子さんは、ほとばしるようにどしどし詩想の湧く人である。細部に拘泥せず、あふれる思いを単刀直入に歌のかたちにしつらえてゆく。そのエネルギーと情熱は輝かしいものがあって、ときには圧倒される思いがする。地域の短歌普及のため不屈の活動をし、多くの人を束ねてきた。こういう人がいるから短歌は支えられているのである。
(小池 光)

・ひとりのるエレベーターに影うつす
 わが決断はこれでいいのか
・いつの日も情熱的でありたいが
 梃子の支点がぶれるときあり
・わが裡のデブリとりだす埋み火の
 くすぶる物体【もの】を業【ごふ】と言ふのか


第2歌集
「短歌人」「餐」同人、「むらさき」代表
2022年9月17日発行
四六判上製カバー装258頁
定価:本体3000円[税別]
装幀/真田幸治
装画/Johannes Vermeer
 

 
佐々木通代歌集
『夜のあすなろ』


 人の世のさまざまな悲苦に出会いながら、佐々木通代の歌にはいつも明るく透明な陽が差している。歌をつくることがすなわち生きるよろこびであり、また生きる支えでもあるからだ。感覚冴えて、表現は平明。頼りがいのある歌の作り手が、一人、ここにいる。
(小池 光)

・月照らす笛吹川のかはらゆく
 老いし狐をおもふことあり
・病棟のまへの直ぐなるアスナロの
 六、七本にせまるゆふやみ
・去りがたく十数分をながめをり
 青岸渡寺【せいがんとじ】に滝かたむかず


第2歌集
「短歌人」同人
2022年9月5日発行
四六判上製カバー装188頁
定価:本体2600円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
鯨井可菜子歌集
『アップライト』


ひたむきに働きつつ
濃密になってゆく
他者との時間。
日々の実感を
一首に掬い取れば、
言葉も人も動き出す。

光をもとめ、
光のもとへ。

・きみのいる(いない)あしたに嚙み砕く
 ジンジャーブレッドマンの左手
・店員に手を引かれたる着ぐるみが
 段差を降りるまでを見ていつ
・会議室にダイオウイカの横たわり
 残業を減らすための会議よ
・社会性おばけ、という名を
 自らにつけたり シーツ被って歩く
・ふすまを開けてホットケーキを勧めおり
 電話会議を終えたる君に


第2歌集
「星座α」会員
2022年9月17日発行
四六判並製カバー装152頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
藤原龍一郎 著
『抒情が目にしみる
現代短歌の危機[クライシス]

現代短歌に魅入られて半世紀、
時代と向き合い、
果敢に状況に切り込んできた。
短歌形式を選択した自負、
塚本邦雄、福島泰樹たち、
敬愛する歌人への思いを
情熱をもって描き取る。

「短歌人」編集委員
2022年9月1日発行
四六判上製カバー装228頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
装画/Aubrey Beardsley
 

 
砂田暁子歌集
『遠霞』


季節の移ろいの中で、
自然に身を委ね、
存在と非在を往還。
境界を時に越え、
命を凝視する
詩想の結実。

・うつし世の有ると無しとの境目に
 みんみん蟬とほくみんみんと鳴く
・わが傍へささつと過ぎぬ
 亡きひとのこゑ持つ風と一瞬おもふ
・のつと出る大地に近き夏の月
 のぼりゆくほどに小さく清か


第8歌集
水甕叢書第916篇
令和4年8月20日発行
四六判上製カバー装218頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
室井忠雄歌集
『麦笛』


 室井忠雄の歌はどの歌とっても歌意がハッキリわかる。これだけハッキリした歌を詠むのはかんたんなようでかんたんでない。年季が要るし、勉強もしないといけない。それをキチンと果たして来た。虚飾を排し、読者に媚びることなく、「実」が詰まっているのである。それにしても地方公務員として、有能、誠実、ムダ口たたかぬ。こういう人が地域にいれば、実にありがたいと思わずにいられない。
(小池 光)

・学芸会の舞台にわれあり
 「みにくいあひるの子」のみにくいあひる演じて
・火葬場担当でありし若き日に
 死者を焼く原価を計算せしことあり
・三依の里の児童生徒は獅子がしらを
 小さき額につけて踊るも


第4歌集
「短歌人」同人
2022年8月14日発行
四六判上製カバー装230頁
定価:本体2500円[税別]
装画/松原 賢
装幀/真田幸治
 

 
明石雅子歌集
『発寒河畔
さくら鳥の来るところ

 気品のある歌の骨格の上に、感受性というしなやかな筋肉が張り付いている。明石雅子の短歌は本格的な詩歌の美の根源を希求しつつ、時代にも敏感に反応する。あるいは大胆な口語表現も取り入れられる。それが歌人としてのオリジナリティと言えるのだ。こういう自在な個性があるゆえに、現代短歌としての生き生きとした息吹がどの作品にも存在し、輝きを放っているのである。
(藤原龍一郎)

・やはらかき雪のくびれにさす茜
 中洲ふたわけにして川の流るる
・あふむきに泳ぎゆくときつるくさの
 つるの捩れのゆるびゆくなり
・善人ばかり乗つてゐるのに地下鉄の
 連結ジャバラは震へてをりぬ


第2歌集
「短歌人」「花林」同人
2022年8月8日発
四六判上製カバー装160頁
定価:本体2400円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
奥村晃作歌集
『象の眼』


 二〇一九年七月から二〇二二年三月までの、足掛け四年間、満三年弱の期間に詠み溜めた歌の中から選んで一集を編むことにした。
 たまたま、新型コロナウイルスのパンデミックの始まりから今日に至るまでの、我が暮らしの中での詠嘆であり、おのずからコロナ禍歌集となった。
(「あとがき」より)

・自転車もろとも飛ばされそうな強風が
 折々に吹く道を漕ぎ行く
・我が歌を書写せるノート我に賜び
 行ってしまった萩原慎一郎
・「マスクせよ」「マスクしなさい」
 その声を同調圧力とわれは思わぬ
・うた会の仲間も教室の生徒さんも
 共に学び合うわが歌の友
・ヒトは皆顔にマスクを付けてると
 生後二歳の子が認識す 


第18歌集
コスモス叢書第1213篇
2022年7月22日発行
四六判上製カバー装260頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
鈴木竹志歌集
『聴雨』


数多の本に寄り添い、
学生たちと歌を学ぶ日々。
平穏な暮らしに
生まれるさざなみを
率直に掬い取った歳月。
そして、逝きし人への思い。

人の営みのなかに
いつも歌はある。

・愚痴のなき仲間と酒を飲む夜は
 酒も美味いし悪酔ひもせぬ
・声あげて『山西省』の歌読めば
 学生たちも粛然と聴く
・読みなれし二宮冬鳥の雨の歌
 いづれも聴雨の歌と今に悟れり
・三畳の書斎にこもり原稿に
 あぐねてをれば小窓うつ雨
・空漠の心といふはまさにあり
 訃報の一矢に傷を負ひつつ


第3歌集
コスモス叢書第1211篇
2022年6月26日発行
四六判上製カバー装208頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
装画/小村雪岱
 

 
斉藤光悦歌集
『時のパースペクティブ』


 斉藤光悦を構成しているのは、地方と都市、若年と老年、抒情と叙事、実存主義と構造主義などなど。その間で揺れ動きつつ生きてきた経緯がこの歌集の大きな流れになっている。
(沖ななも・跋より)

・月という夜空の穴の奥にある異界よ
 そこにおれもゆくのか
・ふるさとの訛りを聞きにゆきしこと
 いちどあり上野駅地下通路
・五十五年臆病者で生き来しか
 嫌われぬよう喧嘩せぬよう


第2歌集
熾叢書第98篇
2022年5月29日発行
四六判並製カバー装192頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
装画/Vilhelm Hammershøi
 

 
片岡絢歌集
『カノープス燃ゆ』


人生の変動の時期、
誠実に言葉と向き合う日々。
ひととのふれあいの中、
生まれた歌の質感、
瑞々しい生。

・万物があるこの世にはあるだらう
 星降るやうに皆が笑ふ日
・君はただゆららさららと持つて来よ
 君そのもののそのぬくもりを
・誰も彼も靄より出でて名を呼ばれ
 靄へ戻りぬ この世は花野
・人を恋ふときの眼差し 死を想ふときの眼差し
 カノープス燃ゆ
・仲が良いことよりも良いことはない
 地球の何処を探してもない


第2歌集
コスモス叢書第1210篇
2022年5月14日発行
四六判上製カバー装198頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
今井聡歌集
『茶色い瞳』


対象を見つめる時間は流れ、
ゆっくりと言葉が立ちのぼる。
日常から掬い取った詩の断片、
そこに生まれる驚きと発見。

・近からず遠くもあらぬ通りより
 路面を穿つ音の響き来
・見るのみで雲の手触り知らぬのに
 ふかふかと言ひふはふはと言ふ
・顔を湯にあらひて拭ひむきあへば
 鏡の男茶色い瞳【め】をす
・梅雨入りのそらの半ばにほんのりと
 白骨色【しらほねいろ】の円光ありぬ
・深海魚わが沈めれば
 光あはき綿津見の底方【そこひ】しろく身を伸ぶ

【栞】
石川美南*やさしき蝸牛の独白
内山晶太*表現と沈黙の狭間
奥村晃作*何よりも短歌が自らを語っています


第1歌集
コスモス叢書第1204篇
2022年2月26日発行
四六判上製カバー装220頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
大原幸子歌集
『グラジオラスの花束』


 歌集の多くは何気ない日常の歌だが、印象に残るのは家族の歌である。そこには幼少期から現在までの大切な時間が流れている。
(川田由布子・跋より)

・石段を拝むがごとく登りゆく
 祖母の背中に木もれ陽のふる
・他愛なき事をふたこと言う父の
 声のみしたりあかつきの夢
・あたたかき母の手のひら
 いつまでも覚えておかむ母の子として


第1歌集
「短歌人」会員
2022年2月20日発行
四六判上製カバー装172頁
定価:本体2200円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
馬淵のり子歌集
『そっと置くもの』


 あとがきに「古希の節目」なんてあるので驚いてしまう。全くそんな歳の人とは思わなかった。老いてゆくなげきなどどこにもなく、いつも明るくて気持ちがいい、透明な風が吹いている。ごく自然にこれは「幸福」の歌集なのだが、その幸福のすきまに漂うように「ことば」が入ってきて、一瞬一瞬、一日一日を忘れ難く刻んでゆく。まさに「そっと置く(大事な)もの」がそこにあるのだ。
(小池 光)

・どこにある馬淵のり子の終点は
 花の雨ふる四月におもう
・軽快にしゃかしゃか磨く歯ブラシの
 腰のくびれがたまらなくいい
・そっと置くものに音あり
 小説のはじまりのように初雪が降る


第1歌集
「短歌人」会員
2022年2月10日発行
四六判上製(セミハード)カバー装214頁
定価:本体2000円[税別]
装画/馬淵いづほ
装幀/真田幸治
 

 
中道操歌集
『人間の声』


この歌集のひそめている二十年あまり、「さまざまな邂逅」や「別離」のあわいを、ただひたすら漕ぎのぼっていたことになる。
(「あとがき」より)

・若き日のブーニンのショパン聞きながら
 鍋磨きをり春はもうすぐ
・大海の一滴の身とおもへども
 一滴の生もなかなか難儀
・アカンサス丈たかく咲けりギリシアへと
 いざなひくれし小川国夫氏


第2歌集
コスモス叢書第1201編
2021年12月10日発行
四六判上製カバー装226頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
中村典子歌集
『郭公の巣』


中村さんは世界の料理の研究家だ。「食」とは生きる意志なのかもしれない。大切な人の死を乗り越えて、中村さんの歌はいのちへの信頼に満ちて温かい。
(富田睦子)

・朝な朝な子らは告げをり病む母に
 けふ朝顔のいくつ咲けりと
・今少し大きが良きかと四つめの
 弁当箱買ふ高校球児に
・翡翠色に若布煮あげて筍と
 春の出合ひをひと鉢に盛る


第1歌集
令和3年11月24日発行
四六判上製カバー装312頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
三枝昂之著
『跫音を聴く
 近代短歌の水脈

第13回日本歌人クラブ大賞受賞

直文、信綱、樋口一葉から佐太郎、北杜夫まで
語りかけるようにして辿る21人の軌跡。
短歌という魂の詩型への飽くなき好奇心は
歴史に耳を澄ませる。
他に鉄幹、子規、晶子、啄木、柴舟、長塚節、茂吉、白秋、空穂、三木露風、村岡花子、宮澤賢治、植松壽樹、筏井嘉一、土屋文明、半田良平を取り上げる。

りとむコレクション121
2021年9月22日発行
四六判上製カバー装338頁
定価:本体2600円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
松村正直著
『踊り場からの眺め

  短歌時評集2011-2021


時代と併走して、現状に切り込み、未来を見据える。
分断を超え、〈現在〉と対峙し続けた十年間の視点。

「短歌」「毎日新聞」「朝日新聞」「現代短歌新聞」連載時評のほか、この期間の数多くの評論を収録。現代短歌の先端を描き取った一冊。
*人名索引あり


2021年9月16日発行
四六判上製カバー装330頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
石川なおおき歌集
『風と樹と II』


今まで全く読んだことがなかった父の歌と初めて向き合うことになりました。父の歌には、花鳥風月ではなく、身の回りの美の発見でもなく、飲酒の喜びでもなく、取材に行った各地農村のこと、家族のこと、晩年を過ごした北千住のまちのことがまるで日記のように書いてありました。
(石川敏・あとがき)

「人間詩歌」の信夫澄子と同行、平成5年~平成20年、補遺(昭和58年~平成4年)の作品を収録。


・北千住に移って五年
  下町の地図を探る荷風を探る
・若葉とはこんなに美しかったのか
  手術三日目のまなこを開く
・利根川はわが出発点
  利根川はわが終着点と思う このごろ 


第3歌集(遺歌集)
令和3年9月16日発行
四六判上製カバー装190頁

定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
真狩浪子歌集
『童話の森』


 女性が子育ての細部を短歌に詠うことは珍しくないが、この一巻は息子さんが二歳の時から詠い始められ、短い連作のかたちで、二十歳になるまでが詠われている。息子の成長というテーマにこのようにこだわり続けた歌集は稀有である。
(藤原龍一郎・跋より)


・教室の天井のあの靴跡は
 いつかの虹を超えたる一歩
・十七歳母を見下ろす背高の
 翳は濃くなり薄くなりする
・しならせて、まるくつつんで からだとは曲線、
 そして曲線を恋ふ 


第1歌集
「短歌人」同人
2021年8月18日発行
四六判並製カバー装188頁

定価:本体2000円[税別]
題字/真狩怜琴
装幀/真田幸治
 

 
堀田茂子歌集
『宍道湖』


八十四歳から九十二歳までの八年間の短歌教室への提出歌をそのままに編み、読み応えのある歌集となったことを堀田茂子さんと共に喜びたいと思う。
(奥村晃作) 


・逝きてより覆ひしままの碁道具に
 手ふるれば鳴る那智の黒石
・宍道湖の真中の小さき嫁ヶ島
 つかのま見せて霧流れゆく
・ベランダに遊ぶ子雀よろぼふも
 リズムとるがに雀のタンゴ


第1歌集
令和3年8月24日発行
四六判上製カバー装110頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
牧野芝草歌集
『勾配』


「感度(sensitivity)と増幅度(gain)」ということをずっと考えている。短歌について言えば「何を題材にどのような視点で歌を詠むか」と「それをどのくらいの力加減で詠むか」。「感度(sensitivity)と増幅度(gain)」を適切に制御することが何かを表現するということの本質なのかもしれない。
(「あとがき」より)


・日ごと夜ごと新種は生まれぼくたちの
 未来に花を添えてくれる、か
・次にどんな場面が出ても
 慌てないくらいの覚悟ははじめからある
・赦されてこの一群のしんがりを歩く
 みんなの背中が好きだ
・いつかぼくが死ぬときに見る光景が
 これであるならいつか死にたい
・窓一枚分を切り抜き玄関の
 壁に掛けたいほどの夕焼け


第2歌集
2021年7月15日発行
A5判並製表紙装148頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
扉・写真/牧野芝草
 

 
宮田長洋歌集
『無情の武蔵野』


宮田長洋は、人間の営みを一貫して詠む。デッサンたしかな叙景歌の味わいはもちろんのこと、かつて療養地でもあった武蔵野を歩きながら愚直なまでに人間を考える姿に心うたれる。心身の失調を乗り越えつつ暗鬱な時代に懊悩する一方、一首一首の歌に人間を見つめる眼のあたたかさが息づいているところがやさしさであり、宮田長洋の歌人の真髄である。
(生沼義朗)


・武蔵野の木々に曾ては護られて
 遠き世のごと療養所あり
・死に方を考えていると一人の言う
 カフェに老いびと四人向きあい
・われ肝炎きみ膵臓の癌病みて
 二年ほどの濃き時間あり


第4歌集
「短歌人」同人
2021年5月25日発行
四六判上製カバー装200頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
 

 
松村威歌集
『影の思考』


 大方人生も見えた六十歳になって、文学青年らしかった時代を懐かしみ俳句を始めた。そして短歌に移った。私の表現には程よい長さと感じたからだ。あの頃考え、感じた夢のつづきを、今何人かの方に頷いていただければ、この上ない喜びです。
(「あとがき」より)


・ついてくるおのれの影を追い払い
 ドアを閉めればそこにまた影
・とおくきて詩は復讐と見つけたり
 ナイフのおもてにしずもる桜
・はるかへとつづく鉄路も濡れており
 われに安らぐところはありや 


第1歌集
2021年2月26日発行
四六判上製カバー装154頁
定価:本体2200円[税別]
装幀/真田幸治