| |
| |
|
 |
岡本はな歌集
『川へ行く道』
歌人の心は時代の陰翳をうつして、さまざまな表現を模索しながら、くり返し川へと帰って行く。その往還のうちに、どんな個性的な表現が生まれるか──
(藤原龍一郎・跋より)
・あさあさに蜻蛉の湧きてふえてゆく
夏の葉書を出さなくなりぬ
・蜘蛛の巣にきらきら待ち構へる主が
わが母だつたとしても壊した
・「さん」づけに呼び慣れし頃子とわれに
程よき間合ひ生まれたるらし
第1歌集
「短歌人」同人
2024年12月25日発行
四六判並製カバー装220頁
定価:本体2300円[税別]
装画/栗原じゅん子
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
安富康男歌集
『花鳥風月のうた』
新宿御苑に桜が咲き盛り、
水元公園に椋鳥親子が遊ぶ。
銀座に立ち並ぶブランドショップにも
下北沢の劇場街にも
季節の風が吹き抜けて、
麻布十番に清かな月光が冴えわたる。
歌人の感性は季節の推移に
敏感に反応し、歌が生まれる。
令和の東京の花鳥風月が此処にある。
(藤原龍一郎・帯)
・春は来て四谷の町の路地深く
昭和の銭湯名残漂う
・夏の日の夕暮れ迫るペニンシュラ
尖塔伸びて西空を突く
・冬陽射す麻生十番路地果てに
黒壁館のワイナリー見ゆ
第4歌集
歌と観照叢書第312篇
2024年12月15日発行
四六判上製カバー装212頁
定価:本体2600円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
石田恵子歌集
『祖母ほほほ』
新生児が腕の中にいる。
長い間歩いた果てに出会った湖のようだ。
穏やかな風も吹いてきた。
ほほほ、ほほほ、
祖母として微笑みながら生きていこう。
・5週目と子が告げてより毎日は
去るものではなく積むものとなり
・父母祖父母四人をSPのようにして
よちよちみどり児公園に行く
・テニスする時間とお金と健康は
あるがそこには上達がない
第2歌集
2024年11月1日発行
四六判上製カバー装208頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
桑原憂太郎著
『現代短歌の行方』
変貌、あるいは更新してゆく現代短歌。
一つのテーマを掘り下げ、
テクストと対峙。
どこまでもぶれない視点により、
軽快かつ果敢に切り込む。
現代短歌評論賞受賞者による意欲作。
[主な収録論文]現代口語短歌のリアリズムとは、口語短歌による表現技法の進展、現代口語短歌の〈私性〉、新しい「写生」の可能性 ほか。併せて2019年~2022年の「時評」を収録
第1評論集
「かぎろひ」代表、「短歌人」「太郎と花子」同人
2024年9月30日発行
四六判並製カバー装212頁
定価:本体2400円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
渡部洋児歌集
『メモリー』
過ぎ去りし時間、
去り行きし人々、
すべてが記憶となり、
思い出となる。
旅を重ねるたび、
孤独の意味を知り、
新たな歌の境地へ。
・われの生[よ]も音楽劇と成り得るか
椅子に凭れてとおく聴くメモリー
・沈丁花匂わば止まる
家族より呼びかけられし者の如くに
・海の辺に生まれ生き来て海を離[か]れ
海が恋しき夏の日はなお
第4歌集
「短歌人」同人
令和6年9月24日発行
四六判上製カバー装168頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
木村順子歌集
『萩風光』
季節の移ろいに思いを寄せ、
日常のゆるやかな起伏を
濃やかに掬い取る。
望郷の念をかすかに滲ませ、
前を向きやわらかな詩魂を
積み重ねる歳月。
・ただいちど瑠璃鶲見し川土手に
あまた咲きゐるムスカリの花
・パクチーをちぎりたる手の匂ふまま
ゆふべ受けとる宅配荷物
・一本のみ葱買ふわれをあらまあと
彼岸の母は戸惑ひをらむ
第2歌集
「晶」同人
2024年9月24日発行
四六判上製カバー装186頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
斎藤千代歌集
『月曜バッグ』
月曜が始まる。
図画教員としてのめまぐるしい日常。
変容する教育現場とコロナ禍に消耗するも
子どもたちとふれあい、友たちと出会い、
かけがえのない日々を送る。
・去る人は失くしてしまった本のよう
もう開けない思い出せない
・裏返る少年の声公園に
ひびき夕暮れ深くなりゆく
・君の特別になりたかった
私だけ見てほしかった夏の蓼科
第3歌集
音叢書
2024年9月1日発行
四六判並製カバー装196頁
定価:本体2200円[税別]
装画/著者
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
早川晃央歌集
『こいつら』
「僕たちを短歌が結ぶ」
早川短歌は成長短歌、胸熱・ほっこり・吹き出し笑い。
早川君(愛称ジョン)と私の出会いは明治大学教職課程。「明大を私が欲し明大が私を欲したゆえの合格」は名歌。
授業で私が「短歌が得意で地理の先生になるなら、地理短歌作ったら?」というと、即興でシベリア気候など数首を詠みあげた。驚きの才能にクラスがどよめいた。
今は生徒とともに育つ早川教諭。早川短歌は日常を祝祭にする。
明治大学文学部教授 齋藤 孝
【栞】
臨場感を生きる/黒瀬珂瀾
徒手空拳の突破力/大松達知
『こいつら』の表現と構成/西田谷 洋
・明大を私が欲し明大が
私を欲したゆえの合格
・ユニクロで働く君は僕といる
ときとは違う笑顔をつくる
・どれもみな同じタイルの床なれど
一度も踏まれぬタイルもあらん
・授業とは真剣勝負
真冬でもジャケットは脱ぎ袖はまくって
・「こいつら」と思う日々でも
「こいつら」が愛おしくなる桜の季節
第1歌集
コスモス叢書第1238篇
2024年7月11日発行
四六判上製カバー装190頁
定価:本体2300円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
河野泰子歌集
『六月の鏡』
風土に溶け込み、
定型に寄り添いながらたゆたう。
日々の営みから生まれ出る
詩のかけらの反射。
数多の別れを経た寂寥感から、
己という存在を捉え直し、
静かに今を見つめる。
・これは木の香り、此岸より彼岸へと
わたるたましひ 美(いつく)しいそらだ
・もうおもひだせない亡母の相貌(かほかたち)
或るとき え、え、といふこゑや降る
・生きかはりまた生きかはりツユクサの
野にみち神の本意(ほい)のやうなり
・貼り替へし障子をふいに翳らせて
羽あるものは過(よぎ)りゆきたり
・十歳のわれと此の年のわたくしと
〈生〉とはひとつの点でしかない
第4歌集
「未来」「七曜」会員
2024年6月19日発行
四六判上製カバー装190頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
酒川千鶴子歌集
『父二人』
悲しみが短歌型式にはもっともなじみやすく、誰の歌集でもそういう歌が多くなる。しかし、酒川千鶴子の歌には悲しみよりも喜びや楽しみが数多く詠われている。これは作者の大きな個性といえる。
(藤原龍一郎・跋より)
序・矢野康史
・敬へる父二人居て恥づかしく
ない生き方と思ふ思春期
・角張つた心は筑波の嶺仰ぎあふぎ
歩けばくちびるに歌
・二十八歳の軍服姿の父凜々し
待つてゐたよと目差しやさし
第1歌集
あさかげ叢書第120篇
2024年6月24日発行
四六判上製カバー装284頁
口絵4頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
古川陽子歌集
『顔あげて』
短歌のタの字も知らない人が、仙台文学館の「小池光短歌講座」にある日ふらりと現れて短歌にハマる。そうしてたちまち短歌のコツというか、短歌表現の核心をつかまえて、こうして一冊の歌集をまとめるに至る。わたしは嬉しい。大戦末期北朝鮮に生まれ、帰国して家族力を合わせ、懸命に生きてきた。期せずしてわれわれが見るのは、戦後一庶民のその貴重な自分史である。
(小池 光)
・しづかなる老後来たればいまいち度
『月と六ペンス』読まむとおもふ
・種無しの柿より出でし種ひとつ
捨てがたくしてポケットの中
・戦争と幼児虐待のテレビより
のがれて雪の梅に真向ふ
第1歌集
「短歌人」同人
2024年6月12日発行
四六判上製カバー装196頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
小田桐夕歌集
『ドッグイヤー』
自分一個の存在さえままならない私たちが、それでも「あなた」を、あなたに伝える「こゑ」を求めることのひたむきさ
(小島なお)
質感の把握が小気味好い。理屈ではない肌触り、それがまずあって、そののち言葉となっていく。
(梶原さい子)
ずれていればこそ、ものごとは立体的に感じられてくる。ざわざわした影をともなうことによって、輝きはなお美しく輝く。
(真中朋久)
[栞より]
・くるみぱんにゆがんだ胡桃があることの
ひたむきさを抱へてゆかな
・かぎろひの春の書棚よ その奥の
骨のやうなる箇所に触れえず
・沸点がたぶんことなるひととゐる
紅さるすべり白さるすべり
・パズルにはpuzzleの綴り まんなかの
ふたつのzに腰かけてゐる
・比喩だけど、と前置きされて語らるる
はなしにときをり比喩でない箇所
第1歌集
塔21世紀叢書第444篇
2024年5月27日発行
四六判上製カバー装210頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
白井陽子歌集
『切り株』
一首一首に、忘れてしまったかもしれない生の手触りを残してゆく日常詠の奥深さ。
(永守恭子)
白井さんの歌の声は、地続きの強さと素朴さと純度をもって、まっすぐ人間の根っこに向かってくる。
(なみの亜子)
歌から感じるのは、母・作者・娘・孫と続く女四代の系譜の強さである。
(松村正直)
[栞より]
・警笛をぷっと落として帰りゆく
駅までわれを送りて夫は
・児が振り向けば児の手のホースも振り向いて
われや窓までぐっしょり濡らす
・あとしばしひょごひょご動き子や孫が
ほっこり座れる切り株目指さん
第2歌集
塔21世紀叢書第441篇
2024年4月19日発行
四六判並製カバー装214頁
口絵4頁
定価:本体2400円[税別]
Cover/William Morris
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
弘井文子歌集
『紙ひかうき』
作者は出雲国、雲南市に住む。宍道湖が近い。多くがいわゆる家族詠だが、ありきたりな都会の家族詠とはちがって、ここにはいま失われたなつかしい血族のあたたかさと、手触りと、そしてふかい悲しみがある。
気が向くと斎藤茂吉の歌集をひらいたり、する。晴れ、ときどき茂吉。平明でごくわかりやすい文体のなかに、短歌への愛と信頼が奏でられている一冊だ。
(小池 光)
・黒き梁のもとに九人の血縁の
つどひて蟹の脚たべるなり
・脂汗いづることなく書きたらむ
茂吉の署名が『寒雲』よりいづ
・「じんせいはかみひこうき」と助手席の
チャイルドシートで五歳が歌ふ
第1歌集
「短歌人」同人
2024年4月6日発行
四六判変型上製表紙装148頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
新海広之句歌集
『蒲公英の絮』
59歳で亡くなった作者の遺句歌集。
高校の生物教師としての暮らし、
折にふれて詠まれた俳句と短歌。
夫の大きな眼で、心で見つめた景色が、創作したいくつもの
俳句や短歌に込められていると思います。
(「あとがき」より)
・朱夏千二百六十余回阿修羅像
・炎帝やゲームセットの内野ゴロ
・とりあへず行けるところまで飛んでゆき
天命を待つ蒲公英の絮(わた)
遺句歌集
2024年4月6日発行
四六判上製カバー装176頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
今井 聡 著
『ただごと歌百十首 奥村晃作のうた』
出会いから二十余年、
師を慕い、師の背を追い、
現代ただごと歌の
魅力を解き明かす。
〈奥村晃作〉を
発見する意欲作。
コスモス叢書第1234篇
2024年2月20日発行
四六判上製カバー装160頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
大松達知歌集
『ばんじろう』
「十九歳のときに「コスモス」に入会してから、三十三年を超えた。多くの方々と出会い、多くの方々とはもうお会いできなくなった。そんな感懐をもらす年齢になったのだ。」
(「あとがき」より)
充実期の597首収録
・いつのまにか速足になる通勤路
けっこう好きだこの人生は
・上の子と呼ぶことのなしこの先も
ずっとひとりのひとりの娘
・オーマツさんにもいろいろモンダイある
けどさっ、さっと言われていまも忘れず
・温泉が六時間後に効いてくる
五十というはじんわりがいい
・標本木のような生徒のひとりふたり
解き終わるまでちらちらと雲
第6歌集
コスモス叢書第1233篇
2024年1月25日発行
四六判上製カバー装254頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
外塚 喬 著
『うたの徒行』
言葉に寄り添いながら、
短歌が傍らにある暮らし。
師 木俣修、
うたの仲間たち、
そして家族、
人への思いが作者を更に歩ませる。
かけがえのない日々を
やわらかな筆致で綴った
「朔日」連載エッセイの集成。
第2エッセイ集
朔日叢書第122篇
2023年12月19日発行
四六判並製カバー装264頁
定価:本体2400円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
奥村晃作歌集
『蜘蛛の歌』
斎藤茂吉の『白き山』、北原白秋の『黒檜』に比すべくもないが、わたしはわたしで、短歌人生の総括としての最終歌集を出したいと思い、出すことにした。
昨年の初夏から本年の初秋に至る一年五ケ月の作品を対象として、落とすべき作は全て落として、三百五十三首を得た。数もよさそうである。
『象の眼』に次ぐ十九番目の歌集となる。
(「あとがき」より)
・論作両輪を努めてきたが
結局は歌だな歌だ歌人は歌だ
・勝つというよりは勝たせてもらったと
いう感じなり囲碁は楽しも
・草花に詳しく親しくなったのは
コロナウイルスのお陰の一つ
・「戦争は悪だ」と歌いし柊二師の
身はボロボロとなりていましき
・前線で戦う兵士こそあわれ
ウクライナのまたロシアの若者あわれ
第19歌集
コスモス叢書第1232篇
2023年12月19日発行
四六判上製カバー装234頁
定価:本体2600円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
川田由布子歌集
『水の月』
時間は静かに過ぎてゆく。
川の町に住み、
訪れる鳥たちが、
日々に彩りを添え、
自らの生を取り戻す。
透徹した眼差しに貫かれた
十五年間の作品。
・足音がすこし遅れてついてくる
外階段のたそがれどきなり
・場所前になると空気がうごきだす
相撲部屋多き清澄二丁目
・美容院に流れていたる「茶色の小瓶」
さざなみとなり私を揺らす
・頁繰る音のみ聞こゆる夜となりて
二人きりなり二人の静けさ
・神染むと己が作りし秋茄子を
詠みたる青邨その深きいろを
第4歌集
「短歌人」同人
2023年12月19日発行
四六判上製カバー装200頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
河合利子歌集
『踊り下駄』
岐阜県郡上市の腰のあたり、かつて「第一回全国美しい村サミット」が開かれた旧美並村が、河合利子さんの暮らしの場である。その風土の豊かさ、たくましくも温かい家族の姿、農に生き反戦を貫く人生態度。どの歌も困難を力に変えて生きる強さと明るさに満ちている。それは、年々の夏を踊り尽くし、擦り切れ古びながらなお、次の夏へと力を蓄える踊り下駄のようだ。河合利子さんはまさに、郡上の人なのである。
(小島ゆかり)
・晩婚のわれに授かりし一人子が
盆に帰り来ピアスをつけて
・「そりゃあなた、踊りは浴衣」と言ふからに
昔の浴衣とりだして着る
・いいかげんは好い加減なり家事、百姓
すべてゆつくりするのがよろし
第1歌集
コスモス叢書第1227篇
2023年10月29日発行
四六判上製カバー装216頁
定価:本体2500円[税別]
装画/河合都妙
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
福井有紀句集
『クレオパトラ記』
俳句による夢園の時空間。
率直かつ奔放に
・マーラーの未完を耳に年惜しむ
・冬の日々クレオパトラと呪文かく
・淋しいよ淋しいよけふ冬至粥
・日射し浴び余生大切ふとん干す
・誕生日祝ふ背に黄砂降る
第1句集
「古志」同人
2023年9月18日発行
四六判上製カバー装132頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
堀部明兎歌集
『Lute』 (リュート)
首都圏から安曇野に移住、
安曇野、生きもの、家族、続 家族、人々、登山、
6つのテーマに分け、
7年間の331首を収録する。
・空澄みていつしかリュートも鳴りやみぬ
午後静かなり秋が来ている
・移住して嬉しきことの一つ目は
青く広がる空の優しさ
・おたがいの夢からさめて現し世の
朝のキッチン今日がはじまる
第1歌集
「短歌人」会員
2023年8月10日発行
新書判並製カバー装164頁
定価:本体1500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
長谷川莞爾歌集
『遍路笠』
前衛短歌の風をモロに受けた早熟な文学青年が幾歳月を経て巡礼者に変貌していた。
「短歌人」の同期として残ったのは著者と私のふたり。
遅すぎた第一歌集は日本的情念の奔出や悲運の女人たちへの鎮魂で圧倒する。
これらは満洲をうぶすなとする著者のたましいの軌跡でありこころの流離のさまなのであろう。
(三井ゆき)
・参道を上りゆくときひとりなり
いつも遅れていつもはぐれて
・河原には子を亡くしたる母たちが
積みし石ありあら草のなか
・転生がわれにあるなら羊など
飼ひてクメールの娘を娶り
第1歌集
「短歌人」同人
2023年7月29日発行
四六判上製カバー装204頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
山田恵里歌集
『秋の助動詞』
一首一首が明快である。そして、読み進めながら不思議に力づけられてゆく。それは、言葉というもの、表現というものを信じて組み合おうとする、しなやかで果敢な心が響いてくるからだ。
(梶原さい子・栞より)
一般的に、人物を描くと、厳しい現実はドラマチックになり過ぎ、幸せな場面は甘くなり過ぎる。しかし、この歌集の場合、人に寄り添いながらも、人を見つめる視線には適度な距離感があるのがいい。
(大松達知・栞より)
・ガンガラと派手に蹴られしロッカーは
今叱りたる我の身代わり
・「十八年」私のそばにいた娘
「たった」と付けたり外してみたり
・すぎゆきを振り返らせるもみじ葉は
過去推量の秋の助動詞
第1歌集
コスモス叢書第1222篇
2023年6月24日発行
四六判上製カバー装220頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
真中朋久歌集
『cineres』 (シネレス)
集題はラテン語の「灰」。
往還の多き暮らし、喧噪から静寂へ。
軽やかに、時に激しく、
日日の濃淡の断片を切り取った重層的な作品世界。
・朝靄のまぶしき坂をおりてゆく
ひとつひとつがくらやみの器
・たのしかつたんでせうと訊かれて言ひよどむ
灰をかきまはすやうな日のはて
・視界内降水しづかに閃光は見ゆ
いくたびも国はほろびむ
・そのさきは終りとぞいふ口ぶりの
甘美にてひとは思考放棄す
・ひかりはかぜかぜはかがやき草のなかに
うしなひしものそのままでよし
第6歌集
塔21世紀叢書第426篇
「塔」選者
2023年6月8日発行
四六判並製カバー装212頁
定価:本体2400円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
山中もとひ歌集
『生きてこの世の木下にあそぶ』
山中もとひは歩く人、
山中もとひは見る人、
山中もとひは動きながら
世間を観察し、
世界を認識する人。
きちんと見れば
世の中はこんなに面白い。
世界の七不思議も
町内の珍事も
この歌人の視界の中にある。
歌人の視線を浴びると
街の事物も正体を
あらわしてしまうのだ。
今日を見つめることで、
昨日も明日も
お見通しにちがいない。
(藤原龍一郎)
・幸運を無駄遣いしてまたバスが
わたしばかりに都合よく来る
・公衆トイレの配管ボックスの扉から
人の出てきて一礼されたり
・「人間の営為の半ばは移送なり」
わが身のほかは今日は運ばず
第2歌集
「短歌人」会員、「鱧と水仙」同人
2023年5月1日発行
四六判上製カバー装118頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
森直幹歌集
『蝉のシエスタ』
この一巻は2022年の毎日、
一日一首ずつ詠まれた日録歌集。
日録とは即ち人生の記録である。
淡々と過ぎ行く平凡な庶民の毎日、
シエスタ(午睡)のような日々の繰り返し。
その何も起こらぬゆえの波乱万丈!疾風怒濤!
四コマ漫画のような諧謔の妙味をこそ味わってほしい。
(藤原龍一郎)
・北向いて電話ボックス立っている
どこでもドアの残骸として (弥生13日)
・トーストにバターのせれば融けだして
停戦願うテレビのニュース (卯月21日)
・束の間の蟬のシエスタ
公園のベンチの上に漂う時間 (文月17日)
第1歌集
「短歌人」同人
2023年3月25日発行
四六判上製カバー装228頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
石畑由紀子歌集
『エゾシカ/ジビエ』
第38回北海道新聞短歌賞受賞

様々な力に抗い、自らの大切なものを守るために、作者はこれからも歌を詠み続けていくだろう。
(松村正直・栞より)
石畑の歌の醍醐味は、自然賛歌や人生賛歌の向こう側を見せてくれる所にある。
(北山あさひ・栞より)
すぐに消える雪の結晶が、つよく心に刻印を捺してしまうような言葉たちだ。雪が残酷にうつくしい
(佐伯裕子・栞より)
・くちびるに触れるはかないものたちを
あまく殺めて これは雪虫
・故障中 貼り紙がはためいている
あなたはどんなふうにされたの
・スズメ目おまえの腹の輪郭を
おもえばふかくふかく降る眠り
・食されぬ肉塊として車輛越し
一度限りの邂逅われら
・生まれなかった子はみんな姉
ジッパーを上げるとき風となって助ける
第1歌集
「未来」会員
2023年2月10日 第1刷発行
2023年12月25日 第2刷発行
四六判並製カバー装176頁
定価:本体2000円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
| |
|
 |
清原洋子歌集
『貝のむらさき』
震災の後の歳月、
福島に暮らし、
対峙する厳しい現実。
歌に支えられ、
歌を手に歩みながら、
詩の萌芽を静かに待つ。
・拾ひしは鳴砂の浜の貝ひとつ
その紫をてのひらに愛づ
・届きしは未来 金文字のダイアリー
残されてある余白眩しも
・激震のさ中這ひつつ摑みたり
闇の中なる小さな空を
第2歌集
歌と観照叢書第307篇
令和5年1月15日発行
四六判上製カバー装210頁
定価:本体2500円[税別]
装幀/真田幸治
|
|
|
|
|